24年12月22日の中日新聞朝刊に弊社に関する記事が掲載されました。
中日新聞12月22日付朝刊1面に次の記事が掲載されましたので報告させていただきます。
この記事は中日新聞の記者が、進工業の製品であるRGシリーズがTeslaの重要な部品として初期段階から採用されている点に興味を持たれ、採用のきっかけやイーロン・マスク氏の先見性も含め、執筆していただきました。
掲載日:中日新聞12月22日付朝刊1面
並外れた先見性、宇宙人のような発想…日本企業幹部が見たイーロン・マスク氏の素顔 商談を機に福井・小浜で製造の電子部品を供給
「あなたの部品が必要だ」。今から16年前、米西部カリフォルニア州の小さなオフィスで、ジーンズ姿の実業家が懇願した。後に電気自動車(EV)を世に送り出し、今や「風雲児」と呼ばれるイーロン・マスク氏(53)だった。商談を機に、福井県小浜市で製造する電子部品を供給することになった進(すすむ)工業(京都市)の幹部は「先見性と技術へのこだわりは並外れている」と、素顔を証言する。
EV大手「テスラ」や宇宙企業「スペースX」、交流サイト(SNS)「X(旧ツイッター)」などを率いるマスク氏は、巨万の富を築き、トランプ次期米大統領の選挙戦を支援。新政権の行政改革トップに指名され、政治分野でも存在感を高めている。
「よく分からないスタートアップ(新興企業)」。2008年、進工業執行役員で米販売子会社トップを務める金牧信二さん(54)は名もない存在だったテスラを訪れた。電圧を制御する抵抗器を見たいとの要望に、半信半疑でサンプルを持参した。当時のテスラは従業員約15人。まだEVの販売実績はなかった。
ノートパソコンの電池を並べればEVは走る―。マスク氏は自動車メーカーに電池パックやモーターを売り込むビジネスモデルを披露し、「デンソーのような会社になりたい」と、トヨタ自動車グループの社名を挙げて力説したという。
だが、業界からは「素人以下の発想」と相手にされなかった。マスク氏は事務所の裏に金牧さんを案内して「仕方がないから自分たちでEVを造っている。早く完成させなければならない」と漏らした。初期モデルの発売が迫っていた。
マスク氏の意志の強さを感じ、納品を約束した金牧さんは「『日本の技術力はすごい』とリスペクトしていた」と振り返る。創業60年、従業員約750人の進工業は抵抗器の進化に専念してきた。1ミリ四方のチップには、EVの高電圧と大敵の劣化に耐える技術が詰まっている。金牧さんは「彼らは性能を分析する能力を持ち、要求も厳しい。他の日本企業にも買い付けに回っている」と明かす。
モーターや電池などテスラのEVの心臓部に組み込まれている進工業の抵抗器は、米航空宇宙局(NASA)から性能面で最高位の認証を受けている。月面着陸や火星移住を目指すスペースXのロケットにも、福井県の小浜工場で製造したチップが搭載されている。
一方、規制が業績を左右する企業群を率いるマスク氏が、政府の要職に就くことへの懸念は強い。同世代のマスク氏が成り上がっていく過程を見てきた金牧さんは「彼は(政府の)トップダウンの方がビジネスが早く進むということを知っている」と指摘。その上で「政治的な絡みではなく、宇宙人のような発想による技術革新で、世の中を幸せにすることに時間を注いでほしい」と話した。
(ワシントン・鈴木龍司)
米トランプ政権発足まで1カ月、マスク氏起用は利益相反?
来年1月20日のトランプ政権発足まで約1カ月。行政の効率化や歳出削減を担う新組織「政府効率化省」のトップにイーロン・マスク氏が起用されることには、利益相反との批判が出ている。
テスラのEVは環境政策を掲げた民主党のオバマ政権下の優遇策で軌道に乗った経緯がある。マスク氏は今後、自身の事業と関係する自動運転や宇宙、人工知能(AI)、医療分野などの規制緩和を主導する可能性がある。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、マスク氏のテスラとスペースXが過去10年間に獲得した政府関係の契約は計154億ドル(約2兆4300億円)に達した。ミシガン大のドン・モイニハン教授は「トランプ氏への接近は連邦政府の政策に影響を与えるという金銭的な動機だ。利益相反は過去にない規模になる」と疑問視した。
(ワシントン・鈴木龍司)